4/20/2011

何度目かの自省。進歩はどこかに置いてきた。

今、小熊英二さんの『インド日記 牛とコンピュータの国から』という本を読んでいます。
2005[2000] 小熊英二
『インド日記 牛とコンピュータの国から』 東京:新潮社

小熊さんは現在慶應義塾大学で教鞭をとっていらっしゃる、歴史社会学者(?)です。なぜ「(?)」がつくかというと、要するに研究分野と知識が広いもので(小熊さん自身は東大農学部出身だし。)、掴み所がないからです。といってもこの本を読むまでは恐縮ながら存じ上げませんでした・・・。

本書は、小熊さんが国際交流基金のプログラムで、インドに客員教授として招かれた際の一部始終を日記形式で描いている、フィールドノート+小熊さんご自身の感想をふんだんに交えた上質のエッセイという感じの一冊です。小熊さんご自身の関心が「ナショナリズム」や「愛国」といったものにあるということで、まだまだ発展途上国であるインドの「ナショナリズム」を取り上げているところ、そしてその発展の歴史や「インド流ナショナリズム」のあり方、「インド文化」といったものを日本のそれと重ね合わせ、秀逸な切り口と視点で比較しているところが非常に面白いです。

講義をしに来ているわけですが、まー毎日毎日よく動くんです。笑 美術館に行ったり講演会に行ったり映画の試写会に行ったり農村に行ったり観光地に行ったり・・・。そして各地で見たもの聞いたものが、余すところなく考察と比較の対象になっているのが素晴らしい。「なるほど、この情報からそんなことが読み取れるのか」と思うところが多々あります。日記を読んでいて飽きないんですねー。


僕の場合、たった10日間、僅か3都市滞在でインドを感じざるを得ませんでした。しかし小熊さん(に限らず文化人類学者や社会学者)は、僕の数十倍の情報を見て聞いて体験して、それでいて自分の主観に惑わされないように情報を上手に組み合わせ、「その国がその国であること」の実態や「その国の文化」を描こうとします。ただ、上手に文化を描くためには滞在日数が長いだけではダメです。比較する材料と、文化を観察し描写するメソッドが必要だからです。この本を読んでいて、知識の有益性を改めて認識しました。膨大な知識は勉強を豊かに、楽しくし、かつ効率的に、そしてより有益なものにするのでしょう。こんな事ずっと昔からわかっているのに、進歩の無い自分に乾杯。

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